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山歩きとそこで出会う花たちへの思い


by minoru_mogi
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草原での夜中の来訪者  (No26)

或る年、松原湖より稲子温泉を経て、白駒池で最初の幕営をして北八ヶ岳に向かった。
この時は最初からハプニングが起きた。
駅よりバスに乗る予定であったが、トイレに寄り、駅より少し上に歩いて国道のバス停に出ると、乗るはずのバスが出てしまい、走り去るバスの後ろ姿が目に入った。1時間に1本もないバスである。丁度その時、自衛隊のジープが1台走ってきて、手を上げると止まってくれた。
2人の自衛官が乗っている。「今、目の前でバスに乗り遅れたので車に乗せてもらい、そのバスに追いついてくれませんか」と頼んだ。幸いにも「いいですよ」と言い乗せてくれた。
ジープは直ぐバスに追いついた。「何処まで行くのですか」と聞いてきた。「稲子温泉です」と言うと「じゃあ、そこまで行きましょう」と我々5人を乗せて山道の終点の温泉まで運んでくれた。お蔭でバスよりもずっと早く着いてしまった。
 白樺尾根を登り白駒池の傍にテントを張り涼しい一夜を過ごした。(往時の山小屋は青苔荘の他1軒しかなかった) 翌日は高見石に登り麦草峠へと歩く。 麦草小屋はまだ道路も無く、静かな草原の中に有った。その日のテント泊地は雨池の近くを予定していたが、山道の分岐を見逃して大石峠に出てしまった。
草原での夜中の来訪者  (No26)_d0059661_16413349.jpg

近くの草原の中に幕営に最適な場所がある。しかし、肝心の水場が無い。良く見ると草原の中に水が流れた跡の溝がある。そこで、これを掘れば水は直ぐに出るであろうと考えた。
しかし、これは大仕事であった。直径60センチ、深さ80センチくらい掘るとやっと水が滲み出してきた。やっと一安心である。
 夕食後、焚き火を囲んでいると霧が広がってきた。人の姿が霧に投影されて大入道がうごめいている。テントでシュラフに入ったが、私はなかなか寝付けなかった。
夜もかなり更けた頃、草原の遠方から「タッ・タッ・タッ・タッ・・・」と整然とした音が聞こえて、
だんだんと大きくなり近づいて来る。動物の足音である事は直ぐ判ったが、1頭の足音ではなく多くの音である。私はシュラフの中で身を縮めた。その音は乱れることなくテントの脇を通り消えていった。
かなりの時間がしてから、私は小さな声で言った。「聞いたか?」と。他の一人が同じような小声で「聞いた」と答えた。他の人達は眠っていたようである。2人だけが怖い思いを共有した。
後で推測するに、鹿の群れが獣道を駆け抜けていったのであろう。

草原での夜中の来訪者  (No26)_d0059661_16423111.jpgこの山行きでの2人だけの思い出であった。(テントと水を取る写真はその時のものである
Commented by mogi at 2005-08-27 23:02 x
これでよいのです
by minoru_mogi | 2005-08-25 16:44 | 随想 | Trackback | Comments(1)