人気ブログランキング | 話題のタグを見る

山歩きとそこで出会う花たちへの思い


by minoru_mogi
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

鳳凰シャジンと高嶺ビランジ  (No14)

 毎年6月末にもなると、今年はどこの夏山に登ろうかと計画を頭にめぐらし始める。
山登りに興味を持つことになったのは、高校時代に生物部で昭和30年(1955)に尾瀬の至仏山に登り、姫シャジン雲居ナデシコを見た時の感動から始まる。その頃の尾瀬はまだ今ほど有名ではなく、尾瀬ヶ原の湿原も木道はあまり無く、ブスブスと足が沈み込む歩きにくいものであった。
北アルプスなどで様々な高山植物を見てきたが、この山でしか見られないという花も幾つかある。その中の2つが鳳凰シャジンと高嶺ビランジで、これらは鳳凰三山でしか見ることが出来ないものである。
定年になり、時間的余裕が出来て一人で8月の末にかけて出掛けた。足には自信が無くなっており、初日は夜叉神の小屋へと早々と到着して宿泊を申し込んだ。この頃ともなると登山者も少なくなり、大抵は単独行の登山者が多い。山小屋の管理人の家族が全員来ており、小学生の男の子の2人が食事を出すのを手伝っている。明後日から小学校が始まるので、明日山を下りるのだと話してくれる。
食後、暮れなずむ間の岳の稜線を外で見ていたが、暗くなったので部屋へと引き返した。子供達が布団を敷いてくれている。
暫くすると、子供の一人が「これから花火をやるよー」と部屋に言いに来た。中高年の登山者ばかりであったが7・8人が皆小屋の外の広場へと出てきた。子供達が市販の打ち上げ花火を次々と、しじまの広がる闇の中へ打ち上げる。しかし直ぐに終わり子供と話しながら部屋へと戻った。
 翌日は朝焼けの間の岳を見て、早々にバラバラに出発した。
今回の登山の目的は2種類の花の自然の生育状況を見たくて来たのである。南御室小屋でコンコンと湧き出る冷たい岩清水に喉をうるおし、さらに登ること1時間くらいで、花崗岩ばかりの樹木の無い砂払岳へ出た。鳳凰シャジンと高嶺ビランジ  (No14)_d0059661_2251667.jpg
その岩屑の中に初めて見るタカネビランジがあちこちに散見される。傾斜が急で足の置き場が無いような場所ではあったが、スケッチ帳を出してスケッチを始めた。今夜泊まる小屋は近いのでのんびりと山の景色を堪能する。
地蔵岳の小屋は水も無く大変混雑しており、小屋の外でスケッチの色付けに時間を割いた。
翌朝は快晴の中を薬師岳から観音岳へと向かう。鳳凰シャジンと高嶺ビランジ  (No14)_d0059661_2264594.jpg d0059661_2251667.jpg
その山道に鳳凰シャジンがあるはずであるが、乱獲された為か周りに注意を集中して見ていても、たったの4株を見つけただけで終わってしまった。その生育場は岩の狭い割れ目から15-20センチくらい茎を下に垂らしてキキョウ科の釣鐘を沢山吊り下げ、その花色は深い紫で大変美しいものであった。
下りは鳳凰の小屋から御座石へ向かったが、静岡から来た登山者と一緒になり、御座石鉱泉に下りて温泉で汗を流し、2人で大瓶のビールを数本飲んだ。彼はそこに泊るとのことで、一人でタクシーで穴山駅へ出て、念願の花たちに会えた満足感を噛み締めながら車窓の鳳凰三山を振返つた。
by minoru_mogi | 2005-06-26 22:13 | 山の花 | Trackback | Comments(0)