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山歩きとそこで出会う花たちへの思い


by minoru_mogi
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渓流の沢音はシンフォニー  (No23)

北八ツの天狗岳を過ぎ、根石岳の山荘前のコマクサの広大な群落を楽しみ、諏訪側に降ようとオーレン小屋へのルートに向かった。小屋の前には冷たい水がコンコンと流れ出しており、乾いた喉を潤し冷水で顔を洗い気分爽快となった。
小屋の人達が2人立ち働いており、その一人が双眼鏡で尾根を歩く登山者を観察しながら「今日は割合と登山者が多いな、何人くらいこちらへ降りて来るかな」と泊まり客の予想を同僚と話している。小憩の後歩き出すと、直ぐに小さな沢沿いの道となった。水流は多くなくサラサラという早い流れで気持ちがいい。降るに従って沢の水量は増えてきて音の感じが変わってくる。そして、対岸から小さな滝が合流して、ドドドと一気に音量が変わった。大きな岩の間を流れる水は微妙な音の変化をする。沢はずっと登山道の左に沿って続いてゆく。
途中でクルマユリ渓流の沢音はシンフォニー  (No23)_d0059661_1672795.jpgが登山道の傍で咲いていた。そこで、木陰に入りおにぎりを食べてから、スケッチを始めた。夏沢温泉近くまでこの川音はずーと続いた。
 思い返してみると、オーレン小屋よりイントロが始まり、滝の合流でフォルテとなり、流れの静かなところでは弦のトレモロが聞こえ、水流が早くなるとアンダンテに調子が上がった。最終章は川より道がだんだんと離れることにより、消え入るようなシンフォニーの終章であった。
 このルートは歩く登山者は少なく3時間半の間に3人の若者に遇っただけで過ぎた。
人家の見える所に出ると、三井の森リゾートの立派な本部棟の前に出てしまった。汗臭い山男の姿は相応しくないので、先ずは、沢水で3日振りのひげを剃り、シャツとズボンを着替えて、靴もスリップオンに替え、登山靴は袋に入れて下げて歩き出した。
かなり重い足取りで、別荘から下りてくる車が、もしや乗せてくれないかなと、僅かな期待をしつつ歩くが、何台もの立派な車が通り越して行くばかりである。
一台のステーションワゴンが同じように通り越してゆき50m程先で止まった。そして、そのままバックして来るではないか。「まさか?」とは思ったが、親子2人連れ(一人は小学生)の運転していた人が「乗りませんか」と声を掛けてくれる。 バス停まではまだ1時間は歩かねばならぬ。
「近くのバスの停留所まで送りましょう」と言ってくれる。 そして、「何処に登ってきましたか」と聞くので、「ピラタスから縦走してきました」、というと、車窓からその山並みを見て「ずいぶんと歩きましたね」と言う。
バス停への方向は親子の行く方向には遠回りではあったが快く送ってくれた。
この経験を含めて、何度かのこの様な出会いがあり、私の山での他人への規範が決まった。
by minoru_mogi | 2005-08-11 16:09 | 随想 | Trackback | Comments(0)